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交通事故発生時

交通事故が発生したら...?

まずは相手の身元・連絡先を把握

事故により怪我をしたり物が壊れたりした場合、加害者に対して損害賠償請求をすることができます。そのため、運転免許証や身分証明書を見せてもらい相手方の連絡先をきちんと控えてください。車のナンバーを控えておくのも良いでしょう。

まずは相手の身元・連絡先を把握

交通事故証明書の取得

警察を呼び、交通事故証明書を発行してもらいましょう。交通事故証明書とは、事故が起きたことを証明する書類で、後に損害賠償請求をする際にこれ1枚で事故が起きたことを立証できるものですので、必ず必要となります。

交通事故証明書の取得

1 事故現場ですべきこと

道路交通法は、交通事故があった場合に、運転者等に対して、直ちに運転を止めて怪我人を救護したり、警察に通報したりすることを義務づけており、これをしないと懲役刑又は罰金刑に処せられることがあります。
このような義務とは別に、後に損害賠償請求をする場合又は損害を支払わなければならない場合に備えて、交通事故の当事者は、次のことをしておく必要があります。

警察に交通事故証明書を作成してもらう

通報により臨場した警察官に、交通事故証明書を作成してもらいましょう。
交通事故証明書とは、事故があったことをこれ1枚で証明できる書類ですので、加害者が自身の加入している保険会社に保険金の請求をする際も、被害者が加害者の加入している保険会社に損害賠償請求をする際にも、必ず必要となるものです。
交通事故証明書には、加害者※の氏名、住所の他に、事故の態様(正面衝突か追突かなど)や加害者が加入している自賠責保険会社も記載されているので、これ1枚から、損害賠償請求をするために必要な多くの情報を得ることができます。
※ ここでは、分かりやすくするため「加害者」と記載していますが、交通事故証明書では、当事者は「甲」「乙」と記載されており、「加害者」「被害者」との表現は出てきません。
一般的には、「甲」が加害者、「乙」が被害者とされますが、絶対的なものではありません。

相手の身元・連絡先の確認

相手の運転免許証や身分証明書を見せてもらい、氏名、住所、電話番号、勤務先等を確認しましょう。
もし連絡先を把握せずに別れてしてしまうと、後で損害賠償請求をするときに、どこに連絡していいか分かりません。相手方の住所が分からないと、調停や訴訟も提起することができません。

車が運転者の所有ではないこともありますので、相手の車の自賠責証明書や車検証を見せてもらい、車の所有者もしっかり確認しましょう。

ひき逃げに遭った場合は、警察に連絡をしてひき逃げをした車を探してもらってください。
ひき逃げをした車のナンバーを覚えていたとしても、現在、運輸局では、ナンバープレートの情報だけでは車の所有者を特定するための資料を開示してくれません。
以前は、ナンバープレートの情報だけで、陸運局に対して、その車の所有者名や住所が記載されている登録事項等証明書の交付を請求することができました。
しかし、この制度が悪用されたケースがあったことから、平成19年11月から制度が変更され、ナンバープレートの情報のみでは登録事項等証明書の交付を請求することができなくなりました。
これにより、ひき逃げの現場を目撃した一般人は、自ら車の所有者を特定するのではなく、警察の捜査に委ねるべきとの運用に変更されました(ただし、現在でも、ナンバープレートの全情報と車体番号が分かれば、登録事項等証明書の交付を請求することができます。)。
警察官によっては、一般人でも陸運局に問い合わせればナンバープレートの情報だけで所有者を特定できると教える場合もあるようですが、現在の陸運局の運用は以上のとおりですので、警察で捜査してもらうようにしっかりと伝えてください。

事故状況の確認

後で損害賠償を請求したり刑事処罰が問題となったりした場合に、事故発生時の状況が重要となりますので、加害者と被害者は、お互いによく事故状況の確認をする必要があります。
もっとも、後の争いのもととなりますので、安易に自分の責任を認めたりしてはなりません。

2 事故現場でしてはならないこと

示談をしたり、一筆書いたりしてはならない

交通事故の被害者となった場合、大した怪我ではないからといって、事故現場で“○○万円支払うことで解決する”などの示談をしてはなりません。口約束もしてはいけません。
交通事故の被害に遭うと、その場では症状が出なくても、2、3日経ってから症状が出る場合があります。
交通事故の被害者が、数日後に症状が出てから病院に行き治療費や交通費を支払い、仕事に差し支えるため仕事を休んだ場合でも、すでに示談をしてしまっていれば、治療費や休業損害等は、示談で合意した金額以上は加害者に対して請求することができません。
ですから、事故現場で安易に示談をしたり念書を書いたりせず、適正な時間をとって、体に異変がないか、車や持ち物が壊れていないかなどを、しっかり確認する必要があります。
ただし、相手から脅迫されたり騙されたりして示談をしてしまった場合は、示談の無効を主張して実際の損害額を請求することができます。

事故現場でしてはならないこと

むやみに謝ってはならない

どちらが悪いかがはっきりしない時点では、むやみに謝ってはなりません。
後になって、どちらがどれくらい悪かったかについて加害者と被害者の間で認識が異なり争いになった場合、“あの時謝っていたのだから、自分が悪いと分かっていたはずだ”と言われてしまうからです。

ただし、赤信号で停止中の車に後ろから追突したなど、明らかに自分に非がある場合は、誠実に謝罪をしましょう。
明らかに自分に非がある場合に被害者に対して謝罪をしなければ、被害者の感情を逆撫でして、スムーズに事件を解決することができなくなってしまう可能性があるからです。

3 加害者が仕事中だった場合、加害者の会社に損害賠償請求することができるか

加害者が仕事中の場合

営業マンが車で外回り中に交通事故を起こした場合など、加害者が仕事中だった場合、被害者は、加害者の会社に対しても損害賠償を請求することができます。
これは、会社は従業員を働かせて利益を得ているので従業員が働くことによって生じるリスクも負うべきだという考え方や、会社は自動車という危険な物を管理しているのでその危険な物から生じるリスクも負うべきだという考え方によるものです。
交通事故では、加害者に損害賠償を支払うことができる財産があるかということは大変重要な問題です。
加害者が任意保険会社に加入しているかが重要なのは、加害者自身に財産がなくても、被害者は任意保険会社から損害賠償を支払ってもらえるからです。
多くの場合、個人よりも会社の方がお金を沢山もっていますので、加害者の会社に対しても損害賠償請求することができれば、被害者の救済という点で、大変有利です。

このように、加害者が仕事中だった場合、被害者は、加害者の会社に対しても損害賠償請求することができるので、「事故現場ですべきこと」でご説明したとおり、事故現場では、加害者の勤務先もしっかりと確認することが重要なのです。

加害者が仕事中のように見えたが、実は仕事中ではなかった場合

例えば、加害者が会社の名前が入った営業車を運転中に事故を起こしたが、実は加害者は仕事中ではなく、会社に黙って私用で営業車を運転していたという場合もあります。
この場合でも、被害者は、加害者の会社に対して損害賠償請求することができます。
ただし、例外的に、会社がその従業員を相当の注意をもって監督していたことや、会社が相当の注意をもって監督しても事故を免れないことを会社が証明した場合は、会社はその事故について責任がない(免責)ことになりますので、会社に対して損害賠償請求することはできません。
その場合、事故を起こした加害者本人に請求するしかありません。

もっとも、会社の免責が認められることはめったにありませんので、ほとんどの場合は、資金が豊富にある会社に対して損害賠償請求することができます。

4 加害者が未成年者の場合、加害者の親に対して損害賠償請求することができるか

未成年者が交通事故を起こして人に怪我をさせたり人の物を壊したりした場合、未成年者に、自分の行為の責任が分かる能力、つまり、人に損害を与えないように注意して行動する能力(これを責任能力といいます。)があれば、未成年者自身が損害賠償責任を負い、親は損害賠償責任を負いません。

加害者が未成年者の場合、加害者の親に対して損害賠償請求することができるか

他方、未成年者に責任能力がなければ、未成年者自身は損害賠償責任を負わず、その親が損害賠償責任を負います。未成年者が被害者に対して負う責任を、親が肩代わりするようなイメージです。

ただし、親が未成年者を監督するにあたって不注意がなかった場合には、親も損害賠償責任を負わないため、被害者は親にも未成年の子にも損害賠償請求することができないことになります。
責任能力は、概ね12歳、13歳以上の未成年者に備わっていると判断されています。イメージとしては、小学生以下かどうかが目安というところでしょうか。

そのため、それより上の年齢の未成年者が加害者である場合、被害者は、加害者の親に損害賠償請求することができず、財産のない未成年者に損害賠償請求するしかないのです。
多くの場合、未成年者には財産がないので、被害者は充分な救済を受けられないことになってしまいます。

ただし、親に未成年者の監督義務違反がある場合、場合によっては、親が未成年者の責任を肩代わりするのではなく、子供を監督する責任を怠ったという親自身の責任として、被害者に対して損害賠償責任を負うとこともあります。
例えば、未成年者が以前から飲酒運転やスピード違反などの危険な運転を繰り返していることを知っていたにもかかわらず、親が運転を止めなかった場合などです。

5 被害者が仕事中だった場合、労災保険は適用されるか

交通事故に遭った被害者が業務中や通勤中だった場合、被害者は、労災保険の適用を受けられます。
しかし、労災保険と他の給付を二重取りすることができるわけではありません。
各種保険の関係については、「自賠責保険、任意保険、労災保険等の関係」でも詳しくご説明しているので、そちらも併せてご覧下さい。

労災保険金の給付を受けるための条件

① 勤務先が労災保険に加入していること
法律は、労働者を使用する全事業を労災保険の対象としているため、お勤めをしている方のほとんどは、労災保険金の給付を受けられます。
なお、勤務先が保険料(掛け金)の支払いを怠っていた場合でも、労働者は、労災保険金の給付を受けられます。
② 業務中又は通勤中の交通事故と認められること
業務中・・・営業で外回りをしていた場合や、出張していた場合等をいいます。
通勤中・・・仕事のために家と会社の間を行き来していた場合等をいいます。
ただし、寄り道をしていたときに事故にあった場合などは、通勤中の事故と認められないこともあります。
③ 労働基準監督署に書類を提出すること
第三者行為災害届に交通事故証明書等の書類を添付して、ご自身の働いている場所を管轄する労働基準監督署に提出する手続が必要です。

給付の内容

療養補償給付(治療費)、休業補償給付(平均賃金の60%)、障害補償給付(障害が残ったことにより得ることができなくなった利益)、葬祭料(葬儀費用)等が給付されます。

加害者からの損害賠償との関係

同じ損害項目について、労災保険による給付と加害者からの損害賠償の両方を受けることはできません。
なぜなら、労災保険も加害者からの損害賠償も、被害者が被った損害を補填するためのものですので、二重取り、いわゆる焼け太りを許さないからです。
被害者が、加害者からの損害賠償より先に労災保険金を受け取った場合、政府が(労災保険は社会保険の一つですので、労災保険給付を行うのは政府です。)その給付した額を限度に、被害者に代わって加害者に請求することになります。

健康保険との関係

交通事故が業務中又は通勤中に起きた場合は労災として労災保険が、それ以外の時に起きた場合は健康保険から保険金の給付があります。
したがって、労災保険と健康保険も、どちらか一方からしか給付が受けられません。

自賠責保険(又は自賠責共済)との関係

自賠責保険は、交通事故による損害賠償を保障する保険ですので、仕事中に交通事故に遭った場合、被害者は、加害者が加入している自賠責保険会社に対して損害賠償請求をすることもできますし、労災保険を請求することもできます。

ただし、二重取りは許されませんので、どちらか一方に保険給付を請求した場合、その損害項目については、保険給付で損害が補填されなかった(足りなかった)場合だけしか、もう一方の保険給付を請求することができません。

なお、自賠責保険は、請求すれば仮渡金(治療費等を立て替えなければならない被害者の負担を軽減するために前払いされる金銭のことです。詳細は、「治療費は誰が負担するのか」の項目をご覧下さい。)を支払ってくれますが、労災保険は仮渡金制度がないため、当面のお金を工面するために、自賠責保険の仮渡金を先に請求することが多くあります。